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2020年05月25日 (月) | Edit |
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人の温もりが懐かしい。地下のレッスン場兼、稽古場兼劇場でこの本を舞台に乗せた。50人ほどの観客で満員になる桟敷席。観客の顔が目と鼻の先。観客に向かって唾を飛ばし、汗にまみれてつかみ合いの大喧嘩をやって(演って)見せる。子供たちのワルさが気持ちよい。

そうそう思い出した。稽古が終わって日本酒で一杯やって、夜の街を新宿駅に向かう。地元の組の若衆と芝居仲間が歩道でもめている。関西弁の仲間が吠えている。遅れてその場についた私が、若衆に横合いから煙草を投げつけて「そら走れー!」、てんでバラバラ一目散に逃げ出した。

私はと言えば、仲間と二人で近所の成子天神境内に走り込み、社のかげに潜り込んだ。逃げ足の速さは天下一品。酔っている上に、アドレナリン全開。アルコールを燃焼して脚は機関車の動輪のように回転して地面を滑る。ほとぼりが冷めたのを見計らって、稽古場(スタジオ)に帰って行った。

あの頃はよく、スタジオで寝泊まりをしていた。レッスンが終わって酒を飲みだすと、家に帰るのが面倒になる。家までは電車に乗って一時間半ほど。翌日は朝からバイトだ。

酒も浴びるほど飲んだ。レッスンが終わるのが夜の9時半、コンビニに飛んで行って、紙パックの日本酒を買ってくる。それが楽しみでレッスンや稽古をしているようなものだった。2リットルパックの半分くらは毎晩呑んでいた。呑むというより浴びていた。

人の汗と涙を吸い込んでツヤツヤに光るラワン材のボロ床にそのままゴロリと横になる。木の床の柔らかさは格別だ。酔って眠ればからだは緩み、床に溶け込んでしまうようだ。汗臭いボロ毛布を掛けてもらって、極楽気分。

寒いときには、石油ストーブ。台車に20リットルのポリタンを5、6個積んでガソリンスタンドに灯油を買いに行く。雪かきもした。

この本の物語りには、なんとも言えないなつかしさがある。夕焼けの色が匂っている。夕日に向かって手押し車を押した記憶とダブるのだろう。

地下の稽古場兼劇場、いわゆるアングラ劇場。地下の倉庫スペースを、壁を剥がして壁という壁を全部ペンキで黒塗りにして、床板を自分たちで敷いた。

埃っぽくて黴臭くて、ゴキブリが徘徊するうす暗い洞窟のような空間。年配の観客は、防空壕を思い出すと言っていた。私の大好きな西新宿のビルの地下のオンボロスタジオは、今は区画整理でもう二度と入れない。

登場人物=小学6年生の8人の仲間たちは、人を切り捨てることをしない。

カバーそでには、『灰谷作品をつらぬく「やさしさ」が、思いがけなく小学生たちの非行やワルさに激突し、その子どもたちの屈折した心の襲(ひだ)の奥に、春を待つ草木の芽のようにみずみずしい真実を発見します。そんな探求こそが「子どもの人生」の第一歩によせる何よりの祝福ではないでしょうか。8人の仲間の概しい冒険に注目してください。』とある。

大学生の頃、私の凍った心を灰谷作品が溶かしてくれた。「兎の眼」「太陽の子」等々片端から読んだ。

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