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2015年06月07日 (日) | Edit |
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脱力ワーク(野口体操)で身体の緊張を弛めると、室内の光景が、眩(まぶ)しいくらいに明るく感じる人がいる。

筋緊張の強張りが神経や血管を圧迫して、視覚の機能低下を起こしていたのだろう。脱力によって、本来のレベルの視覚機能が回復したのだと、これまでは眩しさの理由を解説して済ませていた。

けれども、視覚能力の低下に気付かずに、それが普通の状態であると捉えられてしまっているとき、日常生活全般の中で、当人にとってどんな影響が出るかについては、考えたことが無かった。

脱力ワークを終え、一人の女性が穏やかな表情で眼をひらいたのだが、眼をひらくと部屋の灯りが眩しいといった。そのとき私は、普段の彼女の目つきを思い出した。紗幕(半透明の薄布=フィルター)を挟んで、その向こう側を一生懸命に見ようとしている眼差し。眉間にしわを寄せ相手を睨むような眼差し。

ふだんの彼女は、無自覚に視覚を覆うフィルター越しに、世界を見ようと一生懸命に努力していたのだと。

病気ではないので、フィルターの存在に普段は気付くことは無いのだろう。しかしながらフィルターは人や物や光景の輪郭をうっすらとあやふやにする。物事をクッキリと見えなくする、あるがままの姿を覆い隠す。

無意識のフィルターをそのままに、普段の生活を送るということは、いつも物事との隔たりを漠然と感じながら、それを埋めるように意識的努力(緊張)を自分自身に強いていなければならない。フィルターをしたまま、しっかりと見ようと、常に自分に強いている緊張が、普段の彼女の眉間の皺である。

いくら努力しても、フィルター自体がなくなるわけではない。自分では、はっきりと見ているつもりが実は見えていない。だから他者や状況との関わりに、いくら努力をしても齟齬をきたす。努力すればするほど、人との関わりがちぐはぐで苦しいものとなる。

不安だろうと思う。どんなに努力しても、状況をありのままに見渡すことが出来ないのだから、当然、解決の手段も見えてこない。

彼女の眉間の皺が消えた。聞けば、生活の中で、脱力ワーク(野口体操)を一人でやるようになったという。以前のように、身を固めて極端に走ることが無くなったという。緊張を解いてフィルターを外し、物事をありのままに見ることができれば、解決への道筋は自ずから開けてくるのだろう。

【六根清浄と云います。六根とは眼・耳・鼻・舌・身・意で、私たちが世界を認識するときに働く感覚器官です。外界に向かって開く窓と言っても良いでしょう。その窓に覆いが懸かっていては、物事をありのままに見ることが出来ません。何をしても不安です。清浄とは窓を開きましょうということ。】

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