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2015年03月11日 (水) | Edit |

2015-03-09 002ed

「みなさん足のウラで息をしてください。はい、息を入れて、吐いて~♪」

「貴方はどこで息をしていますか?」こんな単純な質問をすると、不思議とみなさん、一瞬戸惑いの表情をみせます。教室の子供のように、「ハイハイ!〇〇です~!」と自信ありげに答える大人は、先ずいません。

もう少し知的で高級な問いかけを大人は求めているのでしょうか。何か裏があるのではと訝るような表情さえ見えます。それでも、たいていは「口」「鼻」「喉」「肺」「胸」「お腹」などと答えます。

もっと自信を持って答えてくれてもいいと思うのですが、何故でしょうか?答えが常識的過ぎて「どこで息をしているか?」と問うこと自体が間違いなのでしょうか。

息が入ってくるのは、「口」や「鼻」からで、「喉」を通って「肺」に入ります。このとき「胸」や「お腹」が膨らみます。みなさん全て正解です。

ただしこれだけの答で良しとしてしまうと、息をするということの意味内容が、呼吸器官(口・鼻・喉・肺)とそれを動かす呼吸筋(胸や腹の筋肉)の部分に限定されてしまいます。足・脚などは呼吸には関係ないと云うことになります。私はそこに問題を感じています。

水の詰まった風船を想像してみて下さい。机の上に置かれた風船は、水の重さで少々つぶれた形になります。空気を入れた風船は気球のように丸くふっくらと膨らみますが、水を入れた風船は、机の上でブヨブヨダラリとひしゃげた形になります。

さてこうして机上に置かれた風船を、上から親指で押さえて潰そうとしてみます。親指が風船に食い込んでも、すぐには潰れません。親指が食い込んだ分、その風船のほかの部分が膨らんでしまいます。親指が風船を貫通して、机の面に触れても風船がパンパンに膨れてしまいますが、破裂することはありません。

この水の詰まった風船が人間の「からだ」だと考えてください。親指の役割をするのが空気(大気)と呼吸器官や呼吸筋の働きになります。息を吸うとき肺がからだの中で膨らみます。風船に親指が押し込まれたのと同じことが起こります。

「からだ」は皮膚によって全身が覆われています。そして皮膚という皮製の風船の中身は70%が水分です。水の詰まった風船とたいへんよく似ています。そのため息を吸い込むことで肺が膨らむと、親指で風船を押した時のように、「からだ」のほかの部分も膨らみ変形します。難しい言い方をすれば、息を吸いこむことで、身体の内圧が高まり、その圧力変化が体内の隅々にまで伝わっていきます。

簡単にいえば、息をするときは、呼吸に伴ってからだ全体(足先や指先までも)が、僅かですが、膨らんだり萎んだりをくり返しているわけです。こう考えれば、先の「貴方はどこで息をしていますか?」という問いかけへの解答は「全身で息をしています。」となります。

これのみが、正しい答えではありません。ただ私は、これを「どこで息をしていますか?」の答えの一つに加えてほしいと思っています。脳の仕組みの科学的な研究が進んでいますが、「息をするのは呼吸器と呼吸筋の働きによる」と云う情報が脳にインプット(思い込み)されると、そのことが「からだ」の中で事実となり、実現してしまうそうです。つまり「全身で息をする」ことがデリート(情報消去)され、現実にそれが出来なくなってしまうようです。

実際に「からだとことばのレッスン」のワークショップで多くの方たちの「からだ」と接していて私が感じているのは、みなさん、呼吸を上半身での出来事としか考えていないこと。骨盤や股関節・足・脚は呼吸から疎外されてしまっています。そのために股関節の柔軟性(可動域では無い)が失われ、可動域の大小に関係なく、脚の付け根が固く引締められ、呼吸に伴う身体内圧の変化が、足・脚まで届かなくなっています。

単純にいえば、息が深く足まで届かないために、脚の中が酸欠状態になってしまっています。酸欠状態になれば、脚の筋肉が硬化します。脚が棒になってしまい、歩いたり走ったりするためには、意識的に努力をしなければならなくなる訳です。子供の頃は、足の向くままに歩いたり走ったりを、心底楽しんでいたことが、大人になると意識的に自分に努力を強制しないとできなくなります。動きが硬くなってしまっています。

「足・脚で息する」ことは、一見非常識に思えるかもしれませんが、前述のとおり物理現象としては事実です。どうぞ足・脚も息をしていることを、脳にある情報の中に加えてみて下さい。そして時々足の呼吸(呼吸に伴う内圧の変化)を感じてみて下さい。直ぐには感じられないかもしれませんが、時間をかけて繰り返すことで、その感じが掴めてくると思います。

足・脚の呼吸ができてくると「地に足が着く」ことが出来るようになり、心と「からだ」に安心感と安定感が育ってきます。

「貴方はどこで息をしていますか?」に即答できずに迷った人達。きっと、息をするのは「口」「鼻」「喉」「肺」「胸」「お腹」だけではないのでは?と、心のどこかで感じていたのかも知れませんね(笑)

「みなさん足のウラで息をしてください。はい、息を入れて、吐いて~♪」

    *    *    *

結局「からだとことばのレッスン」も「野口体操」も、身体に貼りついた常識的な思いこみや理解(既成概念)をまな板にのせ、実践を通して、その常識をあらため見直し吟味することで、ほんとうの「からだ」って何だろうと、繰り返し問い続けることのようです。

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