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2015年03月26日 (木) | Edit |

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私達は、大地(地球)の奏でる響きの中で生きています。その響きは通常、耳で聴き分けることは出来ません。私達は無意識のうちにその響きをからだで受け留めているのです。

また、大地の響きは、様々な音の振動や音色を呑み込み、大きなエネルギーの渦(混沌)として世界を満たしています。(私は重奏音と名付けました)

大地の響きが、私達の音声や音楽など音の源です。重奏音のプールの中から、私達は声帯や骨や楽器を使って耳で聞くことが出来る音を汲み取ります。

重奏音の中には、響き(エネルギー)の強い特定な音(音程・音調・振動)が含まれ混じり合っています。その特定の音と、骨や楽器との共鳴(調律)が成り立つときに、声音や楽音は強く際立った調べを奏でます。

そうして汲み取られ、私達の耳で聞くことのできるようになった音は、こんどは共鳴の対象を求めて、外部へと響き出していきます。その対象は、眼の前の他者の身体(耳・骨)であったり、ホールの観客の身体(耳・骨)であったり、ホールや建造物や街並みや地形であったりします。

響きを受けとった側のからだは、自らも響きを共有し共鳴を始め、重奏音から音のエネルギーを汲み取るようになります。響きのエネルギーは増幅され、その場は音声や楽音の響きに満たされます。(シンギングボウルの演奏を思い浮かべてもらえば良いかもしれません。)

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上記の説明は私の声に関する一つの仮説です。声の科学や声楽の理論からは非常識な考え方かもしれません。けれども、人間の声を開く(発声)レッスンを長年に渡ってやってきた私にとっては、こんな図式が実感としてピッタリくるのです。

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レッスンの中で私は、朗読している人の隣りに立って、その人の声と言葉の響きを聞きます。文章の内容や表現の善し悪しやテクニックに注意を置くことはありません。

私自身が、からだ全体の感覚を開け放って(脱力開放)、朗読している人の横に立つと、その人のからだの中で音声や言葉の響く模様が、じかに私のからだに移ってきます。発声時に胸を緊張させて息を詰めたり、足を固めていたり、喉に力が入っていたりするのが、私自身のからだの中での出来事のように感じられてきます。

そこで私は、全身的な共鳴や、声・ことばの発露を妨げている、その人固有の緊張をほどき、声が外に向かって響き溢れ出すための、声の道筋を開くことに集中します。発声の障害となる内的な筋緊張(強張り)を解除し、体軸の通る(体幹が吹き抜ける)姿勢や動作を見つけます。

緊張から解放された朗読者のからだは、重奏音からエネルギーを汲みあげ、その声の響きは共鳴の対象を求めて空間を震わせながら、対象となる他者のからだへと溢れ出していきます。

このとき、朗読者にとって自分のからだの実感は管楽器のように空洞になり、重奏音の中から汲み取られた音声を、そのからだを通じて他者に届けるための、共鳴体(楽器)でしかありません。当人には声を出しているという内的な実感は無く、注意を向けた対象へと、自分のからだから声・ことばが自動的にあふれ出し、それを見送っているような感じになります。

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「からだは空(から)だ」と私の師匠の竹内敏晴さんが云っていました。私自身はこの言葉を、自分のからだで実感として掴まえる努力を重ねてきました。一つの到達点として、そこを目指して歩んできたわけです。随分と時間がかかりましたが(なんと34年)、いまでは自覚的に「からだは空(から)だ」のまゝに、立ち尽くすことが出来るようになりました。

実を云えば、これはやっと出発点に立てたということなのです。空っぽのからだを、時代の状況とそこで生きる人達の前に晒して飛び込むとき、どんな実践が創り出されていくのか。今まで通りに師匠のあとを追うのではなく、私自身の歩みが始まるのだと思っています。

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「からだ全体の感覚を開け放つ」「脱力開放」「全身の骨が共鳴する」「からだが管楽器のように空洞になる」「体軸が通る」「からだは空(から)だ」、これらは全て、同じ一つのからだの状態を示しています。これは実際に体験する以外に分かりようのないことかも知れません。体験としては単純なのに、言葉で説明しようとすると無理があります。それでも書き続けている自分に、ご苦労様と云いたくなります。(笑)

現代人は、ことばで説明できないものには、一般的に価値を認めない傾向があるようです。私は、自らのからだをもって体験されたことを、たとえそれが言葉によって説明不能であっても、自分が心底大切だと感じるのであれば、他人の思惑に捉われることなく、徹底的に大切にしたいと思います。それが自分の道を見出し、本当の自分らしさを育てるための唯一の方法のようです。

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